【書評】『三色のキャラメル』永森咲希
「不妊治療体験記」と簡単に紹介してしまいたくない著者のひた向きさと一生懸命が詰まった本。
著者の苦しみや頑張りから目を話すことができず、朝の読書の時間にむさぼるようにして読んだ。6年にも及ぶ不妊治療で結果として子供は授かれなかったけれど、それも宝物と言える著者が眩しかった。
もちろん不妊治療の体験記としても勉強になる。不妊治療について感じたことも素直に書かれている。特に、著者が仕事と通院を何とかやりくりして奮闘する姿は思わず頑張れと応援し本を握りしめてしまう。
今の女性は就活、婚活、妊活、保活…終活と、いつまでも活動に追われる。ようやく1つクリアしてもまた次の活動が待ち受けている。肩が凝らないはずがなく、体調もよい訳がない。そんな永遠の喧騒の中で、自分を客観的に見据え、自分を変えていく強さが皆欲しいに違いない。そのためには、何事にも愚直に一生懸命対峙することだとこの本は教えてくれる。不妊治療を乗り越えた著者がたどり着いた現在の姿にも、苦しみの後の強さと優しさを感じた。一番大切にすべきは自分、静かな人生の充足がそこには確かにあった。
- 作者: 永森咲希
- 出版社/メーカー: 文芸社
- 発売日: 2014/10/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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