てれんぱれんな日々

アラフォー女暮らしの記録

【書評】『三色のキャラメル』永森咲希

不妊治療体験記」と簡単に紹介してしまいたくない著者のひた向きさと一生懸命が詰まった本。

著者の苦しみや頑張りから目を話すことができず、朝の読書の時間にむさぼるようにして読んだ。6年にも及ぶ不妊治療で結果として子供は授かれなかったけれど、それも宝物と言える著者が眩しかった。

もちろん不妊治療の体験記としても勉強になる。不妊治療について感じたことも素直に書かれている。特に、著者が仕事と通院を何とかやりくりして奮闘する姿は思わず頑張れと応援し本を握りしめてしまう。

今の女性は就活、婚活、妊活、保活…終活と、いつまでも活動に追われる。ようやく1つクリアしてもまた次の活動が待ち受けている。肩が凝らないはずがなく、体調もよい訳がない。そんな永遠の喧騒の中で、自分を客観的に見据え、自分を変えていく強さが皆欲しいに違いない。そのためには、何事にも愚直に一生懸命対峙することだとこの本は教えてくれる。不妊治療を乗り越えた著者がたどり着いた現在の姿にも、苦しみの後の強さと優しさを感じた。一番大切にすべきは自分、静かな人生の充足がそこには確かにあった。

三色のキャラメル 不妊と向き合ったからこそわかったこと

三色のキャラメル 不妊と向き合ったからこそわかったこと

【書評】『ミニチュア作家』ジェシー・バートン

ミニチュア作家

ミニチュア作家


毎月立ち読みするVogueでフリーダ・カルロの家を訪ねる記事を読んだ。フリーダの内心に繊細に迫るその記事に魅了され、記事の著者をチェックしたのが、ジェシー・バートン。

記事の紹介でバートンが作家であることが分かり、すぐにamazonで検索して『ミニチュア作家』を即購入。もともと大好きなドールハウスのイラストが表紙の可愛らしい本。しかし、届いてびっくり、481頁の厚さ!しかし、やはり期待を裏切らず、ほぼ徹夜をして読み終えてしまった。深夜に読むミステリーは、ぞくぞくして最高に面白かった!

舞台は17世紀オランダ。アムステルダムの裕福な貴族の家に嫁いだ若い妻ネラが主人公。謎に満ちたその家で、夫からのプレゼントのドールハウスを鍵に、家族の秘密が暴かれていく…。大きなお屋敷での孤独の中で、口が悪く冷たい義姉、好奇心旺盛なメイドらと孤独の中で過ごすうちに、少しずつ成長し自立していくネラ。17世紀のオランダ貿易やアムステルダムの町の様子が垣間見えるのも、とても楽しい。

ところで、この小説のキーワードの1つが砂糖。砂糖を使ったお菓子が出てくるのだが、中でも懐かしかったのが「マジパン」。マジパンとは、砂糖とアーモンドを練り合わせたヨーロッパ名物の洋菓子。昔ドイツ旅行をした時、パン屋やケーキ屋できれいにデコレーションされたマジパンを沢山見かけたのを思い出した。見ているだけで楽しいお菓子なのだ。

gotrip.jp

それからもう1つ、この小説の主人公であるネラ、ペトロネラ・オールトマン。実在の人物で『ペトロネラ・オールトマンのドールハウス』という作品がアムステルダム国立美術館に展示されており、それを見た作者がこの小説の着想を得たのだという。

 

www.tripadvisor.jp

大好きな作家がまた1人増えた。次回作も楽しみ!

【テレビ番組】『100歳から始まる人生(Life begins at 100)』(NHKBS世界のドキュメンタリー)

102歳のブロガーであるスウェーデンのダグニー・カールソンさんに密着したドキュメンタリー。

たまたま見ていたテレビで、ブログを更新するおばあちゃんにドッキリしてつい見入ってしまった。

黒字に小さな白い水玉のジャケット、エメラルドグリーンのストールのおしゃれなおばあちゃん!茶目っ気とユーモアたっぷり。足腰もしっかりと少し猫背に早足で歩く。

ダグニーさんのお宅は、絵画と緑の植物に囲まれ、センス良くきちんと片付いている。物を大切に穏やかに暮らしている様子がよく分かる。テーブルに飾られた花、90歳の妹へのプレゼントの花束…、暮らしの中に花と緑が自然に備わっている。

パソコンは4台目。ブログの更新は毎晩、読者は何と2万人!ブログを書くことで充足感が得られるのだそう。パソコンの配線や設定も何のその、逞しいコンピューターおばあちゃんである。昔なりたかったという教師の夢もパソコン教室の先生として夢を叶えた。

そんなダグニーさんも、若い頃は内気で自信がなく、ありのままの自分を出す勇気がなかったそう。ご自身いわく「目立たない灰色のねずみ」。何て愛らしい。アルコール依存症だった最初の夫の結婚は上手くいかず、シャンデリアとともに逃げ出した。自分を救えるのは自分だけという気骨ある祖母の教え。37歳で学校に戻り勉強。ダンスホールでの最愛の夫との出逢い。「神々しい」夫と「妖精のように」踊ったという大切な思い出。100歳になってもダンスを踊ってくれる交際相手をネットで探す。その思い叶って、90歳の最高齢DJとの新しい出逢いもあった。「私は私」。何よりダグニーさんを大切にしているのは、ダグニーさん自身だ。

年齢は関係ない(ただし、足腰さえ丈夫であれば)。誰の人生も大切でかけがえのないものであることが静かに伝わった。今月で40歳になった。後60年は続けられる笑。明るさとユーモアが長く楽しく生きる秘訣に違いない。私も毎日を慈しみながら、半世紀後に豊かに思い出せるような、そういう日々を紡いでいけたらいいなと思った。

 

www6.nhk.or.jp